経営者と従業員 相手を理解する前でも伝わることがある

中古車販売会社代表A様の体験談  「経営者と従業員とで意識の違い」

私は小さな中古車販売店の社長をしております。元々、細かいところまで気になる性分もあり、すぐいろんな人に先回りして色々な事をしてあげては、ふとした不注意や言葉足らず相手で誤解を招いてしまうこともあります。

経営者と従業員。それぞれは同じ方向を向いているようでいて、その実まったく違う物を見ています。まず第一に経営者は利益を出さなければなりませんし、それが会社の存続はおろか、社員への義務でもあります。

一方で従業員は、利益を第一に考えると言うよりは、社長という司令塔の元、いかに正確な仕事を素早く行うかが大事であり、その根源にあるのは自身の生活のために他なりません。その自身の生活というのは無論、金銭面の事でもありますが、その他にも健やかに働いていくための精神的な部分というのは重要だと思います。

私と従業員も、そういった視点の違いから良く大小様々な衝突を起こしていました。

たとえば、非常に小さい事ですが、工具の使い方。現場を任せている工場長は、私の会社に来る前に他で整備の仕事を経験しており、自分なりの工具の使い方や信念がありました。器用な工場長は、はたから見ると危ないような工具の使い方であっても、誰よりも早くささっとその仕事を終えてしまうような人であり、結果として売り上げに多大な貢献をしていたように思います。

というのも、整備士仕事というのは、工数が決まっており、○○を交換する仕事は1時間で終わるから幾らの工賃。などのような相場が決まっているのです。ですから、その予定された時間よりも短い時間で終えれば終えるほど、会社にとっては利益になります。

しかし、私はある時工場長に言いました。

「君の工具の使い方は間違っている。面倒かもしれないが、このように使う用にしなさい」と。

当然、人より多く利益を出していた工場長は、その場で反論こそしなかったものの、内心穏やかではなく、不満が私の耳に届いたことがあります。

「俺のやり方でやっていて利益が出ているんだからそれでいいじゃないか。それが会社のためだろう」と。

私も工場長の言っている事も十分わかっています。

しかしながら、私にはこのような思いがあり、工場長に伝えています。

「たしかに、自分自身のやり方を見つけることは大事だし、それによって作業スピードは早くなるだろう。けれど、工具というものは正しい使い方があって、それらの使い方を誤ると怪我を招いてしまう。会社はそれに対してお金を払えば済む話だが、実際に怪我をした本人にとっては一生の問題だ。だから工具は正しく使いなさい」

私の思いを全て伝えると一番よいのですが、なかなか言葉が足らず、この話を聞いた一緒に働いている息子が気をきかせてくれ、工場長に伝えてくれたみたいです。

最初こそ、「いや、でもそれは……」などと、小さく反論していたそうですが、工場長は、私が本気で従業員の事を考えているのだと言う事が分かると、「たしかに、今度生まれる子のためにも、今怪我をして働けなくなるわけにはいかないからな」と、彼の中で納得してくれたようでした。

また別の日にはこんな事がありました。

整備をする人間ではなく、自動車の洗車や納品を専門でする60代ぐらいの女性社員の方がいたのですが、その方が会社への不満を私に言って来た事があります。

「洗剤の使う量だとか、水を流す量。あと、細かい日用品の使用量まで、社長はなんでもかんでも把握して節約しようとする。ケチケチしていて気分がよくない」というものです。

たしかに、私の指摘の仕方も悪かったのかもしれません。

というのも、その女性社員の方が昼間、大量にコピーミスをしてしまったのですが、それらを裏紙として利用せず捨ててしまったという事がありました。そしてその日の夕方の終礼でその話を責任者がしてくれたのです。

私はその場におりませんでしたし、その話をしたのはたまたまでありましたが、女性社員の方からすれば大勢の前で恥をかかされたと思っているようでした。

一方で、その時期、自動車にもリースの波が訪れてきており、取引先が次々にリース会社へ切り替えてしまい、会社は本当に大変な時期でした。

そんな中、1年のうち10日ほどしか家に帰れない状況で、あちこちかけずり回ってお金を作ったり、借金をしてまで皆に給料を払っていた状況でした

しかし、そんな中でも私は

「自分がおたおたしているのを見せたら、皆が不安に思うし、労働に対してきちんと対価を払うのは雇っている側の責任だから」と、皆の給料を下げること無く、自分自身の給料だけを減らし、寝る間を惜しんで働いていました。

節約を呼びかけたのだって、そういう事です。結局、小さな金額であってもこれ以上会社のお金が足りなくなってしまうと、皆の給料を下げざるを得ないため、皆に協力をお願いした事でした。

当然、そういった話を当時社員の方に言うわけにはいかなかったのですが、、、

後に会社の業績が上向いた頃、その女性社員さんが当時の状況を耳にしたそうで

「そこまで自分たちのことを考えていてくれたのか」と思ってくださったみたいで、

ホッと胸をなでおろした事を覚えております。

私は、長い間経営者の立場で社員と一緒に働いていたからこそ分かる事があります。

それは、経営者とは孤独であり、それでいて誰よりも責任感をもたなければなりません。

経営者と社員、両者の溝は容易に埋まるものではありません。

置かれた立場、状況もそれぞれで全く違います。

しかしながら、お互いがお互いの事を理解すれば、より気持ち良く働いていけると、強くそう思う次第です。

コメント無題2

A様 貴重なご体験のお話を頂きありがとうございます。

確かに、発言、行動に対して 相手がどこまで理解してどこまで汲んでくれるのかは

難しいものですよね

かといって、細かく説明すれば状況を理解するまで伝わるかとなると、そうはいかないことも多いものです。

A様もおっしゃっているように、お互いがお互いの事を理解する

このことが簡単なようで、なかなかできることではありません。

自分に余裕がなかったりすると、より相手のことを考えることが難しくなります。

かといって、相手の立場を考えるあまり、自分のほうが苦しくなってしまうこともあります。

ですから、なるべくではありますが、わかってほしいという気持ちは、少しだけ横においていただき、“自分の今の状況を相手に伝える”というだけで、状況もかわってきます。

自分がどんなに苦労をしていても、相手がそれを知らなければ、苦労とみなされることはありません。

残念ですが、暇なのかな?と勘違いされてしまう可能性もあります。

それではうまくいくことも、うまくいかなくなってしまいますので、相手に理解を促す一歩前に、自ら情報を発信することも大事だと感じております。

是非、ご参考にして頂けると幸いです。

川口 貴弘

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